EDITOR'S ROUNDTABLE 若手編集者座談会

若手編集者の雑談会のイラスト

ブシロードワークスで働く編集者による座談会。


編集部の雰囲気や悩みを掘り下げます。

A.Yさんのイラスト

A.Y さん

他社BL編集部にて漫画編集を経験後、出版系のグラフィックデザイナーに転職。ブシロードには2021年にデザイナーとして入社、2023年ワークス設立時に異動。好きな作品は『蟲師』『カウボーイ・ビバップ』。

K.Nさんのイラスト

K.N さん

(株)キルタイムコミュニケーションで成人向け漫画の編集者を2年ほど。その後、(株)KADOKAWAヤングエース編集部を経て、2025年(株)ブシロードワークスに入社。好きな漫画は『鋼の錬金術師』『暗殺教室』『金色のガッシュ!!』

N.Yさんのイラスト

N.Y さん

2019年、機械メーカーに新卒入社。2022年に編集プロダクションへ転職し、漫画編集者としてのキャリアをスタート。アプリ運営や他社作品の編集経験を経て、2023年に株式会社ブシロードワークス入社。現在はコミック編集者として約10作品を担当。

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編集者になって感じたこと
N.Yさん
意外と人当たりが大事ですよね。作家さんだけでなく、社内の営業部とかとも関わるわけじゃないですか。こんなに色々な人と関わるんだっていうことに驚きました。僕はもっと専門職的な感じかなと思っていたんですよ。「漫画つくれればいい」と思ったんですけど、そうじゃないなって。「この仕事嫌いかも」って最初思った記憶がありますね。苦手なんで、人と話すの。
K.Nさん
結局、お喋りですからね。
A.Yさん
K.Nさん、会話得意じゃないですか。
K.Nさん
そういう意味で言うと頑張りました。実際はめちゃくちゃ苦手というか、もう『人見知り』くらいなので。
N.Yさん
でも、この仕事って、元からすごい喋られる人じゃないとやれないってことはないですよね。やっていくと自然に鍛えられていくと思います。
A.Yさん
編集者になって感じたことでいうと、思ったより私のなかで漫画の優先順位は高くなかったなと思いました。
N.Yさん
人生における優先順位ってことですか?
A.Yさん
そうですね。
K.Nさん
いいと思っちゃいますけどね。一番のものを仕事にしちゃうとつらいじゃないですか。
N.Yさん
入る前は一番だったってことですか?
A.Yさん
エンタメの一部として選ぶなら『漫画』かな、みたいな感じです。
A.Yさん
実際、自分のなかで映像のほうが影響があったとは思いました。映画とかアニメとかのほうが作品を見る楽しみがあって、それを仕事に活かすとした時に、漫画でどう落とし込むかを考えると楽しいっていう感じですね。
N.Yさん
僕は最初は、漫画が一番じゃなくて全部並列でした。映画・演劇・漫画・小説・ラジオ、全部エンタメはどれも好き、みたいな感じでしたね。小説より漫画のほうがちょっと好きだったかなくらいでした。
N.Yさん
けど実際、エンタメを作るってなった時に、映画とかは大量の人間が必要なんですよね。小説と漫画は極めて少ない人間でやって、そこに一番関われるっていうのが、編集者としていいなと思います。
N.Yさん
あとは、編集者になってから感じたギャップみたいなものもあります。作家さんの担当をさせていただくと、その作家さんの人生を知るわけじゃないですか。すると、経済状況とかもわかるし、大体の預金額ぐらいまでわかってくる。
N.Yさん
その作品が仮に終わったとすると、僕は会社員だから人生にそこまで直結しないけれど、作家さんの場合はダイレクトに関わってくる。なので「この重さ、嫌かも」って強く思った記憶はあります。
K.Nさん
それは思いますね、未だに思います。自分ができなかったら、人が一人死ぬっていう気持ちでやっていますね。
K.Nさん
と同じく、これ会社員が背負っていい責任なんだっていうのが、仕事に対するギャップって意味だと私も一番大きいですね。作家さんとお仕事をすると、もっと自分も頑張らなきゃなって思います。
2
BWK・グロウル編集部とは
N.Yさん
僕は結構ドライで好きですけどね。わりとお互い独立っぽく働くじゃないですか。そんなに同僚と関わることもなく。そこが、すごく好きですけどね。
A.Yさん
確かに、そうかもしれない。結構、個人個人で働く場面が多いかもですね。
K.Nさん
編集者自体が個人仕事になってくるので、「まあそうよね」と思いはします。ブシロードワークスらしい、って言われるとなんだろうな……。
N.Yさん
割と「とにかくやれ」っていう感じだから、そこの大変さはないと言えば嘘になるけど、正直、出版業界におけるブシロードワークスの立ち位置的に頑張らなきゃいけないのが事実ではあるので。そういう意味で上司や同僚がどんどん背中を押してくれるのは、ありがたいといえばありがたいし、しんどいっちゃしんどい、それが本当に半々ぐらいちょうどある感覚です。
K.Nさん
あたりまえですけど、めっちゃパワハラしてくるとか、とんでもない怒号が飛んでくるとかそういう話ではないですよね。
N.Yさん
そうですね。パワハラとかじゃないよ、というのは一応言っておきたいです。
K.Nさん
でも、編集部員のみなさん仲いいなって思いますよ。ちゃんと頼れる方や相談できる方がいる環境ではありますよね。みんなとコミュニケーションが取れる場所でもあるので、編集部としてはすごくいい場所なんじゃないかなとは思います。
K.Nさん
A.Yさんはどうですか?
A.Yさん
そうですね、個人で集中したい人には向いてる職場だと思います。会話しづらい環境ではないから、程よく人と会話しています。訊きたいことがあれば訊けるし、集中したいときは集中できるし。だからチームプレイではないのかな、とは思います。
雑談会の画像
3
実際の働き方について
N.Yさん
僕は「働いている」っていう感覚はないです。僕はもともと研究開発系のお硬い仕事をしていたので、自分で何かを考えて・構築して・報告して・まとめてみたいな、とにかく「うわー!!」ってなりながらやるのが僕のなかでの『仕事』でした。編集だと漫画読んで、漫画作って「ここダメだよ」とか、持ち込み作品を見て「いいね」とか言って。働いてるっていう感覚がそんなにないんですよね。
K.Nさん
N.Yさんの場合、サイトの運営とか編集以外の仕事も多い印象なんですけど、それを踏まえても、漫画作りに一杯一杯って感じではなさそうだなって思いました。
N.Yさん
でも、それは仕事のうちの2割とかなので、8割ぐらいは漫画作っています。僕は10時半ごろに出社して、夜8時ぐらいに帰るか、仕事が終わらなかったら夜10時ぐらいまで仕事してますね。
K.Nさん
そんな感じですよね。日によって波がありますしね。
A.Yさん
1日のうち、どれぐらいの時間を打ち合わせが占めてるかとかだと、どうですか?
N.Yさん
僕は、アベレージだったら4割ぐらいです。8割ぐらい打ち合わせで埋まっている日もあれば、奇跡的に打ち合わせがない、みたいな日もあります。
K.Nさん
私は3割ぐらいですね。
A.Yさん
私は極端な人間なので、『今日は打ち合わせを入れない日』とかは、あえて作っています。
K.Nさん
自分でコントロールできるのは、この仕事の強みですよね。
A.Yさん
プライベートとの両立はどうですか?
N.Yさん
両立は多分、この仕事しにくいほうだと思います。
K.Nさん
境目がないですからね。時間の捻出という意味ではできるかもですけど。
N.Yさん
時間は融通がきくから、そういう意味では調整しやすいんです。けれど、さっき言ったように比較的個人プレイなので、誰かに渡すみたいなことができないっていうところで、プライベートとの両立がしづらいことがありますね。「休むから、これやっといて」が言えないですから。
K.Nさん
突発的に発生することもありますしね。いざ「今日は休みだ」って休みにしたとしても急に連絡がきた、みたいな。
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作家との信頼関係の築きかた
N.Yさん
僕は嘘をつかないことを意識しています。だからわかんないことは「わかんない」って言います。「言語化できないんですけどなんかこう思いました」とか、言語化できない部分に対する理屈はあんまり付けられないです。当然、理屈があるところは理屈を持って喋るという前提なんですけど。
K.Nさん
私はネームとかをフィードバックするときに言う理由は、何かしら道筋をつけて言うようにしてます。
A.Yさん
私は会話が苦手なので、あんまり自分が多く喋るタイプではないですね。編集の前は自分がクリエイターだったので、ほとんど人と喋らない仕事をしていたっていうのもあって、最初は全然喋れなかったと思います。どちらかというと、「こうしたほうがいい」というところは理由をつけて話したうえで、じゃあどうするかを一緒に考えるために話し込む、みたいなことはするかもしれないです。
A.Yさん
関係性を築くためでいうと、自己開示の部分はどうですか? N.Yさんは結構話してるんじゃないですか?
N.Yさん
僕は話します。「前職でサラリーマンとして堅い仕事やってました」とか。「この人、至極真っ当な人間だ」って思わせてから、後に男子校時代のちょっとふざけた話をしますね。
A.Yさん
N.Yさんがよく、元カノの話とかをして......
K.Nさん
してますよね。
A.Yさん
聞いてちょっとびっくりする。
N.Yさん
別にそんなに違和感ないんだよなぁ。
K.Nさん
自己開示っていう話だと、私はあんまりしないですね。自分が作品を描くわけじゃないこともあって、「自己開示をしなければできない」っていうスタンスではないです。
K.Nさん
A.Yさんは、自己開示はどうですか?
A.Yさん
私は前職何してたか、みたいな仕事の話だったら全然しますけど。それ以外は関係値の領域ですかね。
K.Nさん
そんなものですよね。
A.Yさん
話の分量は、作家さん6:自分4くらいで、こちらのターンにしすぎないようには心がけています。
K.Nさん
私も6:4です。
N.Yさん
僕もそうかもしれない。自己開示で僕という人間を知ってもらって、その後に相手の話を聞くのがメインなので、ずっと自分が喋っているわけではないです。
K.Nさん
「何が好きですか?」みたいな話はします。何がどういう風に好きで、どういうところに食いついて、どの目線で見ているのかみたいな思考のほうを見ちゃいますね。
K.Nさん
A.Yさんは、喋るうえで気をつけていることはありますか?
A.Yさん
喋りすぎないで、とにかく返ってきたものに対して興味を持って、さらに掘り下げる質問をします。自然とそうなっていることが多いですね。
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5
新卒で漫画編集者、夢を持ったほうがいいのか
N.Yさん
夢…難しいですよ。夢だけでやってる編集者なんて、多分いないんじゃないですか。でも、最初入るときに夢がないというのも、なんか嫌じゃないですか。
K.Nさん
夢ではないですけど、何かよくわからない原動力みたいなものは、どこかしらに持っていたほうがいいと思いますけどね。漫画に対してや、仕事に対するっていう熱意は持っておいたほうが、精神壊したり潰れたりしづらくなりますし。自分でも何かよくわからない、根拠も何もない原動力のほうがいいと思ってます。明確なものがあっても思ったようにならないし、作家命の仕事なので自分が頑張るにも限界がある。なんの未来の保証もないんですけど、でも熱意を持って走り続けなくちゃいけないっていう。
N.Yさん
でも、それを打ち砕かれても諦めないでほしいですよね。
A.Yさん
N.Yさんはその辺、どこでバランスとっているんですか?
N.Yさん
僕はそもそもこの業界に入るのが遅かったので、そもそも仕事というものに夢を持っていないというか、好きなことができているから別にそれでいいって思っています。好きなことができている、っていうので自分の心を満足させつつ、「これは仕事だから稼ぐ」っていうのはちゃんと考えるみたいな。
A.Yさん
22歳で編集者になる方たち、どうなるんだろう? と思いますね。私は間に違う業種を長く挟んでいるから、余計そう思うかもしれないです。
K.Nさん
初手、編集者。「もっと道あるよ」と思います。実際、いろんなことやってたほうが強いですしね。
A.Yさん
仕事に夢がない話になってます?
N.Yさん
夢はないほうがいいんじゃないですか? 夢はないでしょう、夢はなくてもいい。
6
現場社員が思う、一緒に働きたい人
K.Nさん
『明るくて、朗らかで、圧力を生むことのなく、優しくしてくれる人』一択ですよ。
N.Yさん
意外と求めてましたね。それはマックス値ですよ。できれば、ミニマムで答えてほしいです。
K.Nさん
ミニマムで言うなら”会話”ができることですかね。「なんかちょっとすれ違ったな」ってなった時に、「あっ」って気づけて、「すいません、なんか違いましたね」ってできたり、相手のリアクションがおかしいなって気づけて、リカバリーして笑って返してもらえるような会話ができたり、みたいな。相手を見て会話ができること。
A.Yさん
学生でそのことを意識するって相当難しいと思うんですけど。
N.Yさん
あと、単純に相手をリスペクトするのは必要ですよね。同僚であれ、作家さんであれ、リスペクトがない人は、いつかトラブルが起こりそうだなと思います。
K.Nさん
難しいのが、今のは『一緒に働きたい人』という前提の話ですが、他者へのリスペクトがない人が売れる本を作れないかと言われると、そうじゃないという。
N.Yさん
そうなんですよね。
K.Nさん
バチバチっとかましている人のほうがパワー入っている時があったりと、それとこれとはちょっと別なのが、難しい業界だなぁって。
N.Yさん
あと僕は、素直に漫画を楽しめる人に入ってほしいです。この仕事についたら、漫画に対しては多少『嫌な見方』をするじゃないですか。「これってどうして売れてるのかな」「どういう意図でこれ作られてるんだろう」とか。ちょっと『嫌な見方』はどうせしないといけないので、入ってくる段階では素直に漫画を楽しんでる人のほうがいいんじゃないかなって気がします。
A.Yさん
私は、やっぱり人に対しての尊敬を持っていて欲しいです。どうしても、自分のことでいっぱいいっぱいになってしまう時ってあると思います。相手から何かされてカチンときたりとか、つい跳ねのけちゃったりとかあると思うんですけど、一回自分のなかに受け入れて、なぜそうなったかを考えてほしいです。一つ仕事を頼まれただけでも、上司からすると「あなたが今、このタイミングでやることに意味がある」と思って仕事をお願いしていることも多いんですよね。最初のうちは、そういう意図にはなかなか気づけないかもしれないです。でも、まずは一度やってみる、その素直な姿勢は欲しいなと思います。
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